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「お前は・・・・・・」






不意に翔がつぶやく。


「お前は、それを知ってどうしたいんだ?
千夏を殺した犯人に復讐でもするつもりか?」


翔の声は少し震えている。

踏み込んではいけない場所へ踏み込もうとしている、

暴いてはいけない真実を、暴こうとしている。

そんな空気がここには漂っていた。


「別に、犯人をどうこうする気はない。ただ・・・・・・」

「ただ?」





「僕は真実を知りたい。ただ、それだけだ」






僕は翔の目を見た。

彼の目はまだ、不安に揺れている。

そんな彼をよそに僕はビニールごしに携帯のボタンを押した。

小さな画面のメニューを開いてアラームの音を鳴らす。

雨音だけの部屋に音楽が流れ出す。





たどたどしくも懐かしい響き。

翔が息を呑む音が聞こえた気がした。


「お前は、この曲を知っているはずだ」

僕が指摘すると翔は口元を押さえて何も言えないでいた。

図星だからだろう。







空間に響く金属音、ぜんまいを巻く感覚、

その音色を聞いた時、ひどく泣きたくなった。

真実は時にどんな嘘よりも残酷になることがある。





凍りつくような顔で僕を見返す彼に残酷な言葉を吐かなければならない。


僕は、口を開いた。



「もしも・・・・・・もしも姉さんが殺されたとしたら、犯人は・・・・・・」







冷たくなる空気の隙間を埋めるように音楽は鳴り続ける。


それは雨音と交差して、耳鳴りのように僕の頭の中で響いていた。













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