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姉さんが、僕の姉さんになったのは、僕が小学校にあがったくらいだった。

同時に、父と名乗る男が自分の父親である事実も知った。

その日まで母親と二人きりで暮らしていたことに何の疑問も抱いていなかったが、それは普通では無かったのだという事も知った。


姉さんはどこで作ったのかも知れない父の愛人の子だった。


「今までないがしろにしていてごめん、今日から俺たちは家族だ。一緒に暮らそう」


おざなりな台詞を吐いて父さんは笑った。

母さんは馬鹿な女の心の広さでそれを許した。


幸せと言えなくもない家族ごっこは長くは続かなかった。

父さんは僕が中学に上がる頃に、急に家を出て行くことになった。

父さんも母さんも何も言わなかったけれど、他の女のところに行ったのだろうという事は僕にもわかった。

姉さんを置いていったという事は、姉さんの本当のお母さんのところに行ったのではないのだろうと思った。


母さんも姉さんも父を責めなかった。

「かわいそうな人なのよ」と泣きそうな笑みを浮かべて姉さんは言っていた。


中学を卒業した頃から、姉さんが、僕に隠れて父さんに会っていたことは知っていた。

ばれていないと思っていたのかもしれないが、一ヶ月に一回くらいの割合で会っていたようだ。


姉さんは、父さんに会うのを楽しみにしていたんだ。

父さんからもらったオルゴールのぜんまいを何度も回して、次はいつ会えるのだろうと楽しみにしていた。

僕に黙っていたのは、僕が父さんにあまり良い感情を持っていないからだ。

僕は昔から、母さんや姉さんを泣かせる父さんが嫌いだった。


それでも、父さんと会うたびに嬉しそうな顔をしていた姉さんに「会うな」とは言えなかった。


姉さんは、本当に、父さんが大好きだったから。


なのに・・・・・・どうして・・・・・・? 


どうして、父さんが、姉さんを・・・・・・。




続く