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amaoto chapter2 / side syou













「もしも・・・姉さんが殺されたとしたら犯人は・・・・・・」






薫が重々しく口を開いた。

こちらを見る彼は傷ついた小動物のような目をしている。

そんな顔初めて見た。

千夏の葬式でもそんな頼りなげな顔をしていたんだろうか。

これからこいつが話すことは今までの流れからして容易に想像できる。

だが、薫は大きな思い違いをしている。


「ちょっと、待て」


俺は言葉を止めた。

薫は怪訝な顔でこちらを見返す。

言い訳は聞きたくないと思っているのだろうか。


「お前は俺を疑っているのかもしれないが、俺は千夏を殺してない。それだけははっきり言っておく」


俺は薫の両肩を掴んだ。

その瞳に俺の顔が映るように、俺の瞳が嘘をついていないことを確かめさせるように、真摯に見つめた。

すると薫は、意外にも怪訝な表情を濃くして、呆れたようにため息をついた。






「知っている、そんなこと」


俺が呆気に取られてぽかんとしていると、肩をつかむ手を振り払われた。

もう一度薫はため息をつく。

何だか馬鹿にされているようで気分が悪い。


「最初から言っているだろ? お前のせいじゃないって」


「いや、だって、お前。今のフリは完全に俺を疑っているみたいだったじゃないか」


俺の勘違いか?

それでもさっきの薫は、本人は無意識だろうが見ていられないくらい頼りなかった。

試されていた、のかもしれない。自分は。


ピッ・・・・・・。


短い電子音が鳴ってずっと鳴り響いていたアラームの音は消される。

そのことに安心するとともに若干の違和を感じた。それが何かわからなかったが。






「お前に人を殺す度胸があると思えないし」


「ひどい言われようだな・・・・・・」


千夏には『自殺するような人じゃない』とか信頼感を感じさせる発言をしておいて、俺にはこれか。

根拠が信頼から来るものではないことに腹は立つが、とにかく疑いが晴れてよかった。

完全に、ではないかもしれないが。





俺はビニールに包まれた携帯を見た。

ビニールに包むのは、これが唯一の証拠品だから指紋をつけないためだろう。

暗くなってしまった画面をもう一度はっきり確認するために適当なボタンを押す。

ピ、と空間に浮くような電子音がまた響いた。

電波状況を表す棒がきちんと3本立っている。

その隣の電池残量はいっぱいである。何か、おかしい。








続く